レポート12

World:B Place:水の力を称える神殿が見えた丘

死の直前私に語りかけてきたのは私自身だった
この世界──時の凍りついた世界を2000年前なのだと信じて疑わなかったのは私自身の言葉しか手がかりがなかったからだ
果てしない孤独の生を思うと醒めない悪夢の中にいるような気がした

今の私は未来の自分を過去へ運ぼうなどと露ほども思っていない
だが2000年の時はあまりに長い
やがて私は憎しみを募らせあわれな過ちを繰り返すのかもしれない
そのことを思うと恐ろしさに身が竦んだ

やがて私はさまよい歩く中で軍全出会った守るべきものを失った男の言葉によってここが2000年前でないことを知った
男と一緒にいたのはぬくもりを持たぬ女
そして巨大な身体を丸めて縮こまっている獣だった
獣は言葉を話し破壊をこばんで苦悩していた
私は手を差し伸べずにはいられなかった

私はときどき輪廻の始まりを考えた
カオスとなった私が未来の私を呼ぶ
そして呼ばれた私がカオスとなる
この呪われた輪廻は私でない何者かが私を過去へ運ばなければはじまらなかったはずだ
真実が解き明かされる日は来るのだろうか

獣はよく自分がもといた世界の話をした
風を操り大空を自在に駆け巡る船やまるで人のように精巧に動くロボットのこと
それは私の世界で『伝承』となっている物語だった
不思議に思いながらも私たちは互いのことを語りあい各々の帰るべき場所に思いを馳せた
──この獣にいつか名前をつけてやろうと思う

都合のいい記憶喪失

○ティーダ
バッツ

○バッツ
ん？

○ティーダ
元の世界のことバッツはどのくらい覚えてるんだ？

○バッツ
おれか？　うーんほとんど忘れてるなぁ

○ティーダ
えっ　じゃあ覚えてるのってあの汚い羽根のことだけ？

○バッツ
おまえもはっきり言うなぁ
そうだな　ちゃんと思い出せるのはそれくらいだけど──

○ティーダ
ムズムズしないッスか？

○バッツ
ムズムズ？

○ティーダ
オレ　オヤジのことは覚えてるけど他のことは全然わかんないから
もっと大事なことあったかもってたまにムズムズするッスよ

○バッツ
おれは──
と待った　敵だ！

イミテーション戦後

○ティーダ
バッツ　さっきの続き聞かせてくれよ

○バッツ
ん？　ああはっきりしたものじゃないんだけどさ
悩んでもしょうがないてことを教えてくれた奴がいたんだ

○ティーダ
トリじゃなくてヒトッスか？

○バッツ
うん

○バッツ
今のおれみたいに記憶がなくて　でも明るくて気立てもいい奴で

○ティーダ
ふーん？

○バッツ
たぶんおれはそいつに結構励まされてた
だからはっきり思い出せなくてもそいつのマネしようって決めたんだ

○ティーダ
きっとそれバッツの大切なヒトッスよ

○バッツ
そっか？
じゃあそのうち思い出すかもしれないな　あの『じいさん』の名前

○ティーダ
『じいさん』？　女の子じゃなくて？

○バッツ
うん　『じいさん』

○ティーダ
トリの次は『じいさん』　バッツって──

○バッツ
ん？　なんだ？

○ティーダ
いやなんでもないッス！